ユルいのヨシアシ 

エーラスダンロスやら発達障がいやら絵やら

発達障がい 二次障害・パニック

パニック障害、パニック発作、癇癪。
【パニック】という単語の使い方がごっちゃになってしまいやすい気がするので、「少なくともてんの場合のパニックは」、という話。

ご注意:
【パニック】の定義については、あくまで私の持論なのでお気を悪くなさりそうな方や敏感な状況にある方はお読みにならないでくださいね。
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【発達障がいは、その表出の仕方に個人差が大きくあります。このブログに書いてあることは、あくまで私と息子・てんの経験したことです】


息が出来ない…!!

と突然やってきます、てんさんの【パニック発作】。小さい頃はてんさん本人も私も慣れていなかったので収めるのに時間がかかって悪化させることがありましたが、今は早い段階で対応したり予防をしておけるので、【パニック障害】ではない状態。

《認識までのだいたいの経緯》

【発達障がい】と診断がつく前だから、もうすぐ3歳というくらいの頃かな、親戚の家に遊びに行きました。
快活さと大胆さと病的な慎重さが混じったような扱いにくい性格のてんさんにとっては初めての場所だったので、まず入る前にしばらく車でまわりの様子見。親戚には分かりやすいように「人見知りや場所見知りが激しい」と伝えてあったので、よい感じで放置をしてくれ、30分後くらいには家の中に入ることができました。もちろん私にベッタリだったけど、それは問題なし。

親戚たちは気遣いを示してくれて、特に話しかけられることも、逆に無視されることもなかったので穏やかに過ごし、おばちゃんの「アイスクリーム食べるかい?」の問いかけに頷くことまでできました。
問題は食べ始めてから。

私の隣で食べていたてんさんのアイスが、トロンと垂れ落ちそうになっていたらしく、おばちゃん達が「あ、お服が汚れるよ~!」と突然大きな声をだし、みんなの注目が自分に集まったもので、【パニック発作】が起きました。目を見開いて息が吸えなくなって、その場から逃げようとするあまり止める私をボカスカ叩く、その後は震えと一時間くらいのギャン泣き。

それ以来、大きな声や注目が自分に集まると【パニック発作】が起きるようになってきて、さらにその後には人前に出ると発作が起きるかもしれないから怖くて外出できないという、【パニック障害】へと進んで行ったのでした。

(その後、療育園でリハビリなどを受けて症状はかなり改善したものの、普通校では大きな声や注目は付き物なので難しいだろうということもあって特別支援学校を希望した、という訳です)

《パニック発作 てんさんの症状》
●息が出来ない(と感じる)
●震え
●力が抜ける
●耳鳴り(のような感覚)
●動悸
●目眩
●頻脈
●頭痛

てんさんの場合、暴れたり、暴言を口走ったりということはないです。逃げようとするのを危ないからと止められた→逃げるために結果的に相手を叩く、というのはありましたが。

《メルトダウン》
てんさんはいわゆる「アスペルガー症候群」に分類できるようなんだけど、アスペルガー症候群患者のパニック発作の先には「メルトダウン」と言われる状態があります。
パニックがピークを越えてからの、まったく指示が入らなくなる状態。この時に自分を叩いたり頭を激しく打ち付けたり、場合によってはもっと激しい自傷行為を行ったりするので注意が必要。というか、メルトダウンまで行かせないことが大切だと思われます。個人差があるから、あくまで「てんさんの場合は」ですが、

[本人]
●パニック発作が起きた早い段階で人混みから離脱
●なるべく早く座る
●薬があるなら服用
●数をかぞえる、呼吸に集中する、耳をふさぐなど、外部からの刺激を和らげる

[介助者]
●早い段階で安全な場所に誘導するが、本人の身体には触れない、近づかない
●介助者は近くで待機し、できるだけ動かない、目を合わさない
●声かけは落ち着いた低めの口調で「ゆっくりでいいよ」「大丈夫よ」「ここにいるよ」のような肯定的な言葉のみで、回数少なめに(普段から本人とシミュレーションしておくと入りやすいように感じます)
●介助者は本人が仮に自傷行為を始めても(メルトダウンが起きても)、命の危険がなさそうな限りは見守りながら放置。とにかく近づかない 

《メイトダウンが起きてから》
●近づくと介助者も本人も危険なので、近づきすぎず距離を保ちながら見守り
●身体は本人に対して正面を向けない
●時間がかかるので覚悟を決める
●その後の全ての予定がキャンセルになる覚悟を決める

てんさん曰く、パニック発作中は「怖い」と感じているらしい。そして「怖さに支配されている状態」がメルトダウン。怪我をして怯えた動物が身を守るために威嚇をしている状態だと私は認識しています。(あくまで私の息子の状態の話であって、息子を動物扱いしているわけではないですよ)

《予防》
●落ち着いているときに、「苦しい時間が短くてすむように」「苦しい状態にならないように」という前向きな見方で一緒に対処していくための関係性を高めておく
●仮にパニック発作が起きても対処できるように、関係者に事前に説明、協力をお願いしておく

《癇癪との違い》
注意:あくまで、個人的な考えです

てんさんの場合、思いどおりにならないから、気に入らないから、嫌だからという理由では事は起こりません。が、小さい頃は予想外の状況はきっかけにはなりました。

~てんさんの経験~
●「疲れたらやめていいよ」と指示されていて、「疲れたからからやめる」と言ったら「じゃあ、キリ良くここまでやってからやめようか」との対応をされた時
●「間違えても大丈夫」と言われていたのに✕印をつけられたり、書いた文字を消された時
●「好きなことをしていい」と言われていたのに注意をされたり対応できないと告げられた時

など、要するに「言ってることと行動が違う」場合は「予想外」となりパニック発作がおきます。
特に指示を出す側に特性に対する理解がなく、自分の出した指示の曖昧さがきっかけになったと認識できない場合には追い討ちをかけるような言動をとられてしまうので、怖くてその場から逃げようとしたり耳を塞いだり、大声を出して相手の声が聞こえないようにしようとするため「反抗的」「暴力的」「わがまま」ととらえられたりしてきました。

決して反抗心やわがままを通そうとしている訳ではない、曖昧な表現が理解できないのが発達障がいの特性のひとつ、と相手と話し合い、なにより、てんさん自身と「苦しいことを言葉で伝える」意義を話し合い、練習してきました。
日常生活の中でも言葉で伝える大切さを認識できるように、例えば

てん「お腹がすいた」
私「お腹がすいたのね、わかったよ。なにか食べたいものが決まっていれば作るか買ってくるか、近くなら食べに行くかできるよ」
てん「うどんが食べたい」
私「うどんが食べたいのね、わかったよ。お母さんが作ったうどんが食べたいの?それか、どこかのお店のうどんが食べたいのかな」
てん「お母さんが作ったうどん」
私「お母さんが作ったうどんを食べたいの?」
てん「うん」
私「わかりやすく話してくれてありがとう」

てな流れで、さらにいつ食べるのか、できるトッピングはなにかなどを決めていきます。正直、面倒ですが、うどんごときで「息ができない、シヌーーっ」とかなるよりマシです。

大切なのは、
●「お腹がすいたのね、わかったよ」「わかりやすく話してくれてありがとう」で気持ちを言葉で伝える大切さを認識させる
●「なにか食べたいものが決まっていれば作るか買ってくるか、近くなら食べに行くかできるよ」という、可能な案を提示すること。
単に「何が食べたい?」と返してフランスの三ツ星レストランのフルコースとか言われて無理だと伝えたら「シヌーっ」になって面倒なので。

フランスの三ツ星レストランに行けないのは常識だから、そんな事を言うこと自体がワガママだし、まして無理だと言われて駄々をこねるなんて甘やかし過ぎだ、といった批判を受けることもしばしばありましたが、精神科医とも確認しながらてんさんの特性に合った対応をしてきました。

だんだんと歳を重ねて少しずつながら経験を積むなかで、フランスに行くのは大変、近くに美味しいものはある、いつかフランスにも行けるので楽しみにとっておく、といった考え方が少しずつ早くできるようになり、そのうち、自分の気持ちや状況を言葉で伝える、状況を判断して相手が言った曖昧さの中から自分が不安になる要素の部分を前もって自分から言葉で伝えたり質問する、ということができるようになっていきました。

正直、すごーく面倒くさくて忙しい時にはイライラしたこともあるけど、我が家では、いわゆる発達障がい児の【3分の2年齢】と合わせて[急がば回れ戦法]と呼ばれて、実生活でもてんさんの成長にも、人に説明するときにも重宝しています。